トリビュート!千年王國!!

★座談会 【完全版】

コンカリーニョが贈る札幌劇場祭目玉企画「トリビュート!千年王國!!」。千年番長こと橋口幸絵と、橋口&千年王國の世界に挑む若手演出家2人が語る、作品とその周辺のこと。
2009年7月28日(火) @コンカリーニョ

橋口幸絵(以下H):千年王國の芝居ってみたことあります?

谷口健太郎(以下T):一番最初に観たのは『楽園』です。

H:再演の方(2005年)だ。倉庫(さっぽろ村ラジオ・石造りたまねぎ倉庫)でやったやつ。

T:それまでずっと気になってたんだけど、なかなかタイミングがなくて。

H:若いんだよね、いくつだっけ?

T:ここ(イトウワカナを指し)同い年です。高校も一緒ですから。

イトウワカナ(以下W):28歳、同級生です。

H:やだねー。

T:部活も一緒ですから。演劇部。

H:えー!!じゃすべて知ってるんだね、お互いの事。

W:だいたい知ってる。

H:じゃ、付き合ってた人のこととかも。

W:わかる。

H:すごいなぁ、濃いなぁ。

W:あんまり関わりもたないようにしてきたの。

T:ふとした事でもらしたくなるから(笑)。

H:全部知ってるんだもんね。ワカナちゃんは最初に観たのは?

W:私は、『COLORS』です。『COLORS』からはだいたい。再演の『楽園』は見れてないけど。

H:『COLORS』ねぇ。当時、ものすごい失恋をしたのね。なんだろう、コミュニケーションが全然とれなくて。おつきあい〜、みたいな感じではなくて、なんか、愛の地獄、みたいな。

W:(爆笑)

H:落ち込んで。虫けらのように捨てられてしまったと思い込んで。死のうと思ったのね。で、ドライブにいったんだよね。

W:あれ、室蘭?

H:そうそう、室蘭。死のうと思って。その時、家がなかったから、荷物段ボールに全部詰めて学生会館の2階、屋根裏に住んでたんだけど(笑)。もう死のうと思って、知り合いに、「引っ越しするから全部捨てるのに車出してくれる」って、地球岬に行って。室蘭の石油精製プラント。観た事ある?

W:(工場が)好きすぎてあれだけを観に行きました。

T:へー。

H:すごいのね、作業灯がブワーってあって、石油精製プラントの火がブオ、ブオって出て。巨大工場にライトで、巨大イルミネーションみたいになっていて、それ観た瞬間に、“まだ興奮できる”って思って。そこに7色の人が出て来るってイメージが浮かんだのね。赤い人、黄色い人。その中に一人、白い人がいるイメージがあって。その子が主人公だな、その子は誰かっていったら私、名前はイタミだ。「あ、書ける」って思ったのね。それで書いたのが『COLORS』(笑)。それまでファンタジーが得意だったんだけど、そっからどうにか出たくて、『ニライカナイ』で歴史神話系に行って自分の中ではちょっと失敗して。ファンタジーのお葬式をしようって思ったの。ファンタジー総決算みたいな。もうファンタジーは書かないから書ける事は全て書こう、って。あと初めてBLOCHに行ったときで、地下室みたいだなって思ったんだよね。タッパも低かったんで。それで地下室の話を書こうって。私、作品を書く時いっつもお葬式だと思っていて。

W:それすごい分かります。私も自分の中ではこの間の作品(6月、「きれいな鳥がとまるのを待っている」)、ファンタジーのお葬式でした。

H:そういう時期あるよね。

W:もうやらない(笑)。でも今回やることになっちゃった。『星空発電所』は、ファンタジーやらないって自分では決めたけど、やって来た感じが面白いです。

H:面白いよ、星とか。(笑)。

W:星はね、興味ない。わかんない。

H:『星空発電所』は片思いの芝居なんだけど。書いたのが20歳くらいの時で、その時、斜め前のアパートに住んでるバンジョー弾きの男の子に片思いをしていて。ブルーグラス部の部長。何か口実をつけて遊びに行きたかったのね。量子物理学マニアで、「お話をしてくれよ」っていったら、宇宙、相対性理論っていうのはね」って話しを毎晩してくれて、「ブラックホールに近づくと時間が止まるんだよ」、「へえー」って。「今回、星の話しを書くからお話をしてよ」、みたいなことの口実の為に星のこと書いたってだけなの。

T:なんでこれ選んだの?

W:観たことないから(笑)。

T:それだけなんだ。

W:観てないけど、チラシが好きだった。JAMANIさんの絵の。今回どうしよってなったときに、観てないものがいいな、って思って。ついでに言うと、あんまり近親相姦とかがないのがいいなと思って(笑)、これはなさそうだと思って。

H:ちょっとあるけどね(笑)。ほんと近親相姦好きだよね、私。『星空〜』は、劇団の2作目で再演を持って来た。千年王國では初演だけど、学生のときの作品。劇団は学生の時からずーっと一緒にやってきた人じゃない。これは、劇団を作ってから出会ったアーティストの人たちと作ったんだよね。JAMANIくんもそうだし、舞台美術の阿部(剛史)くんも。話し合いの中ですごく世界観を広げてくれた。そういう作業をやって、初期の代表作になった作品ですね。なんかね、『花』っていうので劇団作ったんだけど、どうしても上手くいかなくて。学生の頃とはちょっと違うからなんか違和感あるじゃない。まだ酪農で作ってたからその頃。とぼとぼ歩いてて、お星様がきれいで、手を伸ばしたの。でも届かない!と思って。届かないけど歩く!、みたいな青春の思い出をそのまま作品にしてみました(笑)。

H:(唐突に)え、谷口くんは演劇ってなんだと思う?(笑)。

T:なんなんですかね…。演者としての演劇と、お客さんに見せる際の演劇って言うのは僕の中では異なってるんですよね。演者としては、人生。どれだけ濃い人生を送っているかで役者なんて質が決まるっていう持論があるんですけど。お客さんに見せるときは、ただただ娯楽、とにかく楽しませたい。

H:どういうのが楽しい?楽しいのも全然違うじゃない。

T:僕の中で定義しているのは、“グッとくる”。作品を観て、どういうカタチでもいいから、胸に熱い思いものがこみ上げて来るっていうのが、僕の中でお客さんが楽しませるっていうこと。

H:谷口くんが熱いものこみ上げるのってどういうとき?

T:僕はね、お約束の展開でお約束のハッピーエンドが(全員爆笑)。だからもう、水戸黄門的なあれですよね。どんなにドタバタしてどんなにピンチになっても、印籠一発でダっと終わる。とか、自分が見落としがちなものを気づかさせられるとグっとくる。マンガでも小説でも映画でも、他者とのコミュニケーション、会話っていうのでも、忘れかけてるものとか、ふっと胸の中にきた時に、自分の中にグっときて泣いたりするんですよ。原付で移動してるんですけど、原付乗りながらいろんなことを考えて泣いたりするんですよ(笑)。

H:『COLORS』の時、すごく迷って。めっちゃ暗い話しなので、これをお客さんに提示するのっていったいなんなんだろうってことを思っていて。自分が人生で一番落ちた時期だから、真っ白で痛みも何も感じることができなかったのね、煙草押し付けちゃって、痛いっ、っていうのはリアルに反応できるじゃない。それしか反応できることがなかったんだよ。そういうことやってる自分が本当にイヤで。そういう時に街に出ると、いろんなものに色があるじゃない、緑とか、消火栓が黄色いとか。感情がなにもないみたいな時に、「名刺が赤い」みたいなだけでも涙が出る。なんて天国みたいにきれいなんだろうって。このきれいなものを見せられる、この美しさが伝わればそれはお客さんに観せる価値があるんじゃないかなと思って。あとは、すごい暗い話だから、めちゃめちゃエンターテインメントにしようと思ったの。エンターテインメントは非常に意識した。非常に個人的な物語だから、そこを突き放して職人になろうという部分も。なんかそういう時に私はいいものができるような気がしていて、異質なものが交わろうとする、谷口くんが言ってたみたいに、自分の人生がどれだけ濃いかっていうことと、どれだけ相手が楽しんでくれるか、みたいな、どっちかというと逆じゃん、みたいなものが刷り合おうとした時に、刷り合おうとした時の血みどろが一番面白いんじゃないかと思っていて。そういうのがすごく好き。まとまってないとか、両極端でどっちがやりたいのか、とかすごく言われるんだけど。交わろうとして、ぐちゃぐちゃするのがエロくて好きです(笑)。エロ大好きなんですよね。エロスが大好きなんだけど、プライベートがエロいかっていったら非常に淡白だから(笑)。想像的エロス。私の父は2歳で死んでるんだけど、そこから、生きてる死んでるみたいなことがどうしても芯になっている部分があって、ゆえに、生き残ったって思ってるのね、生き残った方だと思っているから、生き延びる以外に興味がないので、生きて行く力を得ようってこと以外に興味がないんです。生きるって何かっていったら、エロスだって思っていて。エロスって生きている喜びのことだと思っていて、そういう意味ではエロにしか興味がないけど、あんまり猥談を言ってもモテないので(笑)、男の子がエッチな話しをしたら「キャッ」っていえる練習をしてる(笑)。

W:無理だよ(笑)。

H:ワカナさんにとって演劇ってなんですか?(笑)

W:無駄な事だと思う。生きてる上で無駄な事をやってるわけだから。必要ないじゃないですか。やらなくてもいいことだって思ってる。生活する上でのプラスαでしかないと思っていて、だったら何か起こらないといけないと思っていて、日常じゃ起こらないことでもいいし、日常で起きる事そのまま舞台でやることって嫌いじゃないんですけど、それはそれで別な何かを生まないとならないと思っていて。それは何でもいいと思ってるんですよね、エンターテインメントでもいいし、単純に知的好奇心の固まりの舞台でもいい。芸術とエンターテインメントは相反してるってずっと思ってて。それが一致するものを観た事がなかった。でもそれは、一緒じゃん、って思って。

H:何を観て思ったの?

W:羊屋(白玉/指輪ホテル)さんの「Please Send JunkFood」と、チェルフィッチュが、自分の中で、わっ、一緒じゃんって。そこから演劇とか映画観てても、頭の中でわけなくなった。どっちによってるか、とか、お客さんの目を意識してるか、とかは考えるけど。

H:一番無駄なもの、でも日常には絶対ないものってワカナちゃんの中ではなに?

W:うーんと、それは、目の前でいろんな人がわあわあやってることが、私の中ではすでに。もうあるだろうって台詞とか、あるだろう動きとか、それは決まってるんでしょうってことを、上手い事ウソついてくれることが。それこそ、例えば10人揃ってだましてくれてるっていうことは、日常的にない。

H:集団詐欺。女の子はウソにだまされるの大好きだよね。なんでだろうね?

W:ウソついてなんぼだと思ってるし。

H:ウソつきそうだよね。ワカナちゃん。

W:ウソつきますねー、すごい。1回ついたら、普通の生活しててウソついたら、そのウソは絶対墓場までもってかなきゃいけないって決めている。

H:『星空〜』は夏休みからちょっと冬の国に行くってお話で。『COLORS』も、非常に極彩色の世界から真っ白な世界に行く、それは宮崎から北海道に来た私のパターンなんだけど、それを北海道の人たちはどう感じるんだろう?

W:私、橋口さん南の国の人なんだなって思って観てたし、「来た」って思ってるんだって思ってて、ずっと。『スワチャントッド』(2007年)観た時に、やっと北海道が肌に馴染んだんだと思った(笑)。

H:『Meets!』(2007年度にNPO法人コンカリーニョが行った札幌と福岡の演劇交流企画。千年王國は2008年1月に福岡公演を行った)で九州に行った時に、あもう九州ではないのかな、と。九州でも違和感がある。最近はようやくふるさとなしになってきた気がする。北海道の方が長くなったし、でも北海道の人って言われたら違うし、宮崎の人って言われても違うし。そういう意味で免疫がない人になりたい。だからこそ、どこでも入っていける。ずっと北海道だもんね?

T:ずっと北海道ですね。

W:私、本州に初めて行った時に、外国だと思った。私、今まで日本人だと思ってたけど、わかんないことがいっぱいで。

H;北海道は特殊だよね。それが私はすごく面白くて。ものすごい濃いところから来たから、だって宮崎は神話の世界でしょ、2000年前からあったみたいなところから来たから。

W:京都とか東京とか行くと、何千年とか平気で言うじゃないですか。それが感覚的にないから、“何千年”って聞いた瞬間に、中学校のときの歴史の教科書の何千年前、何万年前みたいなやつがバッと頭に浮かぶんですよね。何千年って聞いて縄文時代に飛んでます。感覚がなくて。

H:私が時間軸がすごく大きい脚本を書くようになったのはそういうことかもしれない。

W;胎内に流れてる時間が明らかに違うと思う。

H:逆に九州にいたら限定された時間で書いていたかもしれない。一刹那が永遠、みたいな。

W:千年王國って理にかなってますね。

H:どうなの男子は、こんなロマンチックな女の子チックな。

T;ほえーと思って聞いてましたよ(笑)。僕はそこまで深く考えてお芝居を創ったことがないので、もっとすっごいちっちゃいところから始まってる。オレは本心を他人に言うのが苦手なんです。

H:男子だね(笑)。

T:でも自分の作品を通してだったら言えるんです。自分の作品をお客さんに観てもらって、みんなもこう思ってるんでしょ、って小出しにする。基本、そこから作品が出てくるんですよね、オレが書いてるものっていうのは。それで今までやってきたから、女の子の壮大なロマンチックな話を目の前に、興味がないわけじゃないけど、ほえーと思って興味深く聞いてました。

H:私もそういうところはすごく恥ずかしくて、だから主人公がみんな男の子なんだよね。自分の性じゃない。自分の性でやってしまうと非常に恥ずかしいので。

T:言えないけど自分の中ではぐっちゃぐちゃ葛藤があって、それを分かりやすく台詞にしてしまうんです。それを通して、こういう葛藤ってあるでしょう、って共感してもらえたら、自分の悩みが認められた気がして嬉しかったりする。だから、普段悩んでることとかもホント人に言わなくて、友だちと飲みに行くとかそういうことが本当にないんです。悩み事相談ってことも全くしなくて。それは例えばおつきあいしている彼女とかでも絶対言わない。

H:何言ってるか分かんないわよ!とか言われたりする?

T:いや、話さないです。全部、別に、って流しちゃう。何考えてるの、って言われた時に、すっごいぐちゃぐちゃ考えてるんだけど、言うのがめんどくさいのもちょっとあり、理解してくれるんだろうかっていう不安もあり、言っても理解されないだろうみたいな諦めもあり、何考えてるのって軽く言われたにしては重たすぎるものがあって。だから作品として問いかけちゃう。そのテーマを軸にして作品を創る。だから、どういう話しですか?って聞かれた時に、この話しです、って言えちゃうんです。プラズマニア自体は好き嫌いががっつり分かれる作風なので、批判に負けそうな時がある(笑)。おれはそんなに気強くもないし、どっちかっていうと小さいし、強気に見せてるけど、本当はすごくおっかなびっくり自分の考えを外に出す。だから作品を通してしかそういうことを表現できない。

H:共感の装置なんだね。

T:そうです。だから共感してくれた時に、忘れてたもの、今まで見過ごしてきたものを改めて見つめ直した時にぐっと来るものがあるんじゃないかと思っている。作品の中で、文字をスクリーンに投影してモノローグみたいな感じで使う事があるんです。それは、物語の中の整理をする時間って感じなんです。聴覚で聞くと、その人のキャラクターから生み出された言葉だったりして、その人の声で届くから、イメージが限定される。それがイヤで、そのキャラクターの心情なんだけど、スクリーンに投影する事でその範囲を広げて、共感の幅を広げたいと思って、視覚的効果で文字を使う事にしてるんです。実はいろいろ考えてるんだけど、あんまり何も考えてないように見られたい(笑)。

H:私はすごい真逆で、20歳くらいの時に、彼氏に話が全然通じない時に、自分の使用済みナプキンを投げつけたことがある(笑)。

一同爆笑

W:サイテーだ(笑)。

H:作品も、とにかく距離間を詰めてって、しかも心中する、みたいな話じゃない。命と引き換えに、これを残す、子ども生んでやる、とかさ。拡散していく、谷口くんが言ったみたいに距離があるから伝わる事ってあると思うのね。それが合体したらどうなるか、すごい面白いね。

○2人の芝居は観たことありますか。

H:ワカナのは、遊戯祭のやつ(2007年遊戯祭07「ビュー・ビュー・ティー」)か。ポップだな、女の子だなーと思って。面白いのが、ワカナちゃんと私は分かり合えるところが少なくて(笑)、どちらかというと、お互い足りないとこを持ってる感じが面白い。うらやましいね、ポップな感じが。私は本当に、重たくてなんぼ、みたいな感じだから、その軽やかさはうらやましいと思う。

W:私、そういうタイプだから。重たいですよ。だから軽くしたいんだと思う。

H:逆かも、私、自分はすっごい軽い、なんもないもん。なんかね、入れ物になりたい。だから、ふるさともなくなってしまえばいいし、風になる、風琴になりたい。わかんないよね、作品長く作ってると、自分さえフィクションとして作っていく部分があるじゃない。どこまでが自分がつくったもので、どこまでがネイティブなのかわからない。そっちの分量が多くなっていくと自分がからから乾いていくような気がする。谷口くんの作品はね、赤ちゃん(千年王國俳優、赤沼政文)が出ているのを観て、すっごい怒ったんだよね(笑)。谷口くんの谷口くんによる谷口くんのための芝居だと思って。それがすごくわかるからなんだろうね。私も非常に独裁でやっていたから、役者とのコミュニケーション0、ファシズムファシズムだったから似ていたのかもしれない、やり始めた頃の自分と。そういう意味で懐かしかったのかもしれない。私も役者は駒だ、と言い切っていた時代があって、いなくてもいいじゃん、みたいな役者がいてしまう。自分も上手くその人をみれなくて、役者に自己投影をして、自分に似ていない者は排除してしまうやり方をしていて、まだその強い自我のところにいるんだな、といううらやましさと。

T:それは当時すごく強かったです。あの時期それが一番強い時期だった。

H:しばらく休んだ後の公演だから、ものすごいやりたかったのを貯めていた時期だったんだなと思う。

T:あの時期のを観て、しばらく観てませんっていう人がすっごく多い。だから今見るとまた違った感覚で見れると思う。ただ、根っこは変わらないから、たぶん、まだオレのオレによるオレの為のってテイストは残ってるんですよ。なんだけど、それが少しずつ緩和されて違うところに向かっていく過渡期だと思っていて、特に一番最近すごく思うのが、自分の中で書きたい事はもうない、これから新しく生み出していく作業をする時に、最近、役者にもっと自分で考える事をしないとダメだっていう説教が大半になってきたんだけど、今ちょうど、まだ初期段階だけど途中の時期なので、前とはまた違った感覚で観てもらえそうな気がします。

H:でも面白いよね。すごい巨大なファシストがいて、それに全部が向かっていくみたいなつくりかたって全くされてない時に、久しぶりにそういう人をみた面白さはあった。いい悪いとかではなくて、本当に奇跡的に全員がその一点に向かう時ってあるじゃない、作品て。その時に、どうしようもない強さみたいなのが生まれてくることがある。それを生み出せる力はあるんだろうな、と思った。過渡期か。でもちょうどそのくらいなんだろうな。私も『COLORS』のあとに、もう自分の話しは書かないと思って『贋作者』を書いたんだよね。他者を書きたいという欲求が、28だったから、段階的には、今の谷口くんと同じくらいだったと思う。それから東京に行った。日本で一番好きだったのがマキノノゾミさんだったのね。一番なりたいものに近い人だったので、「現場見せて下さい」って2ヶ月。そこからだね、目玉がひっくり返って。自分の中しか見ていなかったから、初めて演劇って他者を描くものなんだ、ってわかった。役者というのは私ではない、っていうことを思い始めたのがそのくらいだったと思う。

W:私、作り始めたの遅いし、働きだしてて、25歳後半だったし。初めから遊戯祭だったので、違うものといつも一緒にやっていて。だからこないだ初めて自分の事書いたんです、逆に。

H:大人から子どもになっていく感じだね。

W:になって、自分の中に書きたい事がない。言いたい事もさしてなくて。ただ、観たいものしかない。キラキラしたものしか観たくないんですよ。それでも、イナダさん(劇団イナダ組代表)にいつも言われるんですけど、「本当にお前の芝居はいつも面倒くさい女しか出て来ない」って。たぶん、私、面倒くさい女が好きなんだと思うんです。いっつも主人公の女のことは大嫌いなんですよ。書いてるときも本当にむかつくなと思って、どうしてこいつを更正させてやろうってことしか考えてない。それが自分のイヤなところの凝縮なのかもしれないですけど。私、今、芝居自体も女の人に向けてしか書いてないし、万人に向けてはまだ無理だと思っている。それがはっきりしてきたんですよね。今は女の人にしか向けたくない。それがいいかどうかわかんないけど。

H:いいと思う、極端で。

○千年王國10周年なわけですが、お二人は10年劇団続けてると思いますか?

W:劇団をですか、あやしいですね。

T:オレは続けてるかなぁ。

H:なんか学生の時に、先輩に、10年続けてるやつは本当にいないから、10年続けてたらそのときは話し聞いてやるみたいなことを言われて。10年は演劇を続けようと思ったんですね。10年前に、お芝居を辞めるんなら自殺しようと思ってたので(笑)、それか娼婦になろうと思っていたので。一回、もう芝居続けられない、娼婦になろうと思った時に、ランパブで働いた事があるの1日。娼婦になるしかないと思って。

○ランパブなんだ。

W:可愛い。

H;奥までいけなかったから。ランパブに行ってダメだと思って、演劇やろうと思った。別に10年続けたからどうってことはないと思うんだけど、ものすごい財産はあると思っていて、榮田(佳子)さんとか村上(水緒)さんは15年一緒にやってるし。もちろん弊害もあるし、もう夫婦みたいなもんなんじゃない。面白いですよ。長年培って来て、今ここにあるものっていうのはやっぱりかけがえがないし面白いと思うし。だから続けてみたら面白いんじゃないのと思ったし。10年続けるって窮屈だと思うんですよ。いろんな意味でね。いろんなことが窮屈になっていくんだけど、窮屈をその場その場で打破していくじゃない、続けていく為に。外に行くんじゃなくて自分を変えていく事で広げていくっていうのかな。それは面白い。それはひょっとしたら積み重ねなのかもしれないけど。10年続けようとか思ってたわけではないんですけど、辞めるよりは続ける方が面白いと思っていたんです、ってことかな。千年王國ってどんな劇団だと思います。印象でいいんだけど。

W:肉食です。

H:私、お肉ほとんど食べないんだけどね。

W;好きですよ、本番終わった後の女優さんとか見るの。榮田さんとかが、出がらしみたいになってて。

H;女子好きなんだね、オスだよね。

W:そうかもしれない、オス要素はすごいあります。

H:谷口くんは?

T:色彩がすごく鮮やかな印象がある。舞台が色鮮やかじゃないときも、色鮮やかなものがあるような気がして、それは僕にはできないのでうらやましい。僕は単色を強く、強く強く押し出す方なので。ないものねだりじゃないけど、そういった点ですごくうらやましかったりする。

H;北海道に来てからかな、淡いから。無い物ねだり的に色彩感覚が強くなったと思う。あと、北海道の春に超感動したの。真っ白だったところがいきなり色彩が爆発するでしょう。春ってこんなに素晴らしい、みたいな。春って大嫌いだったんですよ、また熱くなるぜって。半年夏だから、向こうは。なんか、ヌエみたいになりたいと思っていて。研ぎすまして研ぎすまして、これが千年王國ですっていうようなナイフのような1本になるよりは、どこまでもだだ広く、自分を垂れ流していたい。垂れ流した先にあるものとムニョムニョ交わって、それも私、みたいな。いっぱいごてごてくっついてよく分からないね、って言われたい。一言で言い表しにくいけど一言で言い表せる、みたいな。ごてごてした。インドの宗教みたいになりたいよね。八百万になりたい。千年王國ってどんな劇団だと思う?

○どんな劇団…、潤いがある感じ、湿度というか。

H:あー、ジューシーが好き。逆にジューシーじゃない男子が好きなので。

W:でもそうじゃないです? 男の俳優さんってみんな、なんか砂漠みたいな人多い。女優さんは滴りおちてる。

H:びちゃびちゃ(笑)。やっぱり南国なんだねー。

W:湿度高いですね。

H:だから珍しかったんじゃないかと思う、千年王國。南国物産展みたいな、そういう位置でいたいですね。北海道で(笑)。楽しみですね、男子系嘘つきワカナちゃんと、砂漠系ナイーブ男子が。

○なかなかいい組み合わせだと思います。

H:私が気づいてないところをいっぱい掘り起こしてくれると思うので、どうぞぜひめちゃくちゃにしてください。ハシグチレイプを(笑)。めちゃくちゃにされたいです(笑)。

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