Concarino

生活支援型文化施設コンカリーニョ

設立趣意書

現代社会では、各分野で市民活動がいっそう活発に行われ、その重要性が言われています。それは市民が自分自身でなにが必要かを考え、なにかをつくりだしてゆくことが大切だという認識が広まったということでしょう。

芸術文化の分野でも、お金さえ出せば享受できる商業芸術や行政のお仕着せの芸術を待っているだけでは収まらない、参加型芸術などの市民の要求、じょ うず下手という評価軸だけでは捉えきれない教育や福祉の分野での芸術の力が認識され始めています。しかし、わが国では、その要求を満たし、芸術の力をフル に発揮する拠点となる“場”も充分ではなく、地域での試みも始まったばかりです。

また各地域では、従来型の町内会などの地縁団体だけによらない、NPOなど様々な活動団体が主体となったまちづくりも増え、地域コミュニティの活性 化が図られつつあります。しかし、地域の様々な活動をつなぐ機能はまだ未成熟で、それぞれの地域に合ったネットワーク拠点がない、そもそも市民が共感を もって気軽に集い、関係と活動を紡ぐ空間と仕掛けがなかなかないのも現状です。

本NPOは、上記のような現状を踏まえ、従来型の鑑賞するためのハコとしての劇場ではなく、自由度の高い舞台芸術創造拠点であると同時にライヴ・ アートを触媒として異分野・異世代の「縁むすび」を可能にし、芸術の力を社会に生かしていくコミュニティ拠点となる劇場づくりを目指します。その目指す劇 場の原型は、7年間の活動実績をもち、2002年8月、建物立地地区の都市再開発計画、建物解体決定によりいったん活動を休止した「Con Carino(コンカリーニョ)」です。

コンカリーニョは、活用されなくなった古い建物のアートスペースへの転用を実践した先駆的なフリースペースでした。石造り倉庫を改装し、札幌市内の 舞台活動者や愛好者、あるいは道外のアーティストたちからも、その古い建物の風情を生かしたハコの魅力と熱意あるスタッフワークで愛されました。舞台方向 も演目ごと変化し、催しごとに会場の雰囲気が丸ごと変わる、深夜の仕込みも上演後の交流会も可能なこの自由度の高さは、訪れるアーティストや観客を惹きつ け、ライヴ・アートを中核とするコミュニティを形成していました。そのコミュニティと地域コミュニティが近しい関係をもてば、芸術文化の可能性を拡大し、 地域コミュニティの活性化につながり、人材育成と地域の特色づくりに貢献するはずです。旧琴似町エリアのもつ歴史性と現在における界隈性は、札幌市内のど のまちよりもライブ・アートを育み、有効にまちの力として取り込んでいくことと思います。

そこで、我々は再開発をきっかけとして、今、ひとまわり大きなコミュニティ形成の拠点を目指して、NPO法人として再出発します。そしてまちがアー トを育て、一方でアートがまちの力になるような仕掛けであると同時に、ライブ・アート分野の北海道のトップアンテナ基地ともなりえる創造現場をつくりま す。多方面へのネットワークを広げると同時に、地域コミュニティの想いからハイアートまでが連綿とつながっていくような劇場づくりです。それは、アートに とってもまちにとっても、尽きることのない可能性を見せてくれることでしょう。

芸術文化には、現代社会のシステムの中で抑圧された人間を解放する力があります。また、新しい価値観を提示する力もあります。そんな芸術のもつさま ざまな力を引き出し、まちの活力に生かし、50年後、我々の活動自体が、まちづくりにひと役もふた役も買えるような存在になっていたいと思います。

2003年4月9日 斎藤ちず(NPO法人コンカリーニョ理事長)