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    Monthly Column

    コンカリーニョに縁のある人々による月替わりコラム


    「この愛の行方を」

     「チョウム プェプケッスムニダ。チャル プタククトゥリゲッスムニダ(はじめまして。どうぞよろしくお願いします)」と言うつもりだった。

     2007年2月、光州演劇協会のパク会長を代表とする7名の方々を北海道文化財団に初めてお迎えすることになり、韓国語のにわか勉強を始めた。お会いした時の最初の挨拶をカタカナでメモして、我ながら健気にも暗記しようとしたのだ。ところが事務所の入り口で最初に見かけた方に、私が発した言葉は「クァンジュ(光州)?」だけ。その後は全部日本語。その時「ネー、クァンジュ(はい、光州)」と答えて下さったのが、「青い演劇村」代表のオ・ソンワンさんだった。その時から今日まで、ひょうひょうとした雰囲気とロマンティストというオさんの印象は変わらない。

     光州は伝統芸能「パンソリ」の発祥地であり、伝統文化を大切にしている土地柄である。同時に国際的な現代美術展として名高い「光州ビエンナーレ」を開催するなど、韓国を代表する芸術の都である。現在、国家政策として光州を「アジアの文化中心都市」にするべく、インフラ整備が進められているという。

     その光州から、オさん率いる「青い演劇村」が『阿娘別曲(アランビョルゴク)』(脚本・演出:オ・ソンワン)をひっさげて初めて北海道・札幌へやってくる。カヤグム、ヘグム、アゼンなどの韓国の伝統楽器と歌が織りなす音楽詩劇である。「最も韓国の香りのする劇をお見せしたい」とオさんは意気込みを語っている。

     韓国の国花「ムクゲ」の伝説と百済時代の説話から題材をとったという『阿娘別曲』のあらすじを読むと、日本でブームを呼んだ韓流ドラマにつながる一つの共通点を感ずる。愛し合う男女はどこまでも一途で、熱く、激しい。その純粋さ、哀切さが多くの日本人の心をつかんだのだろう。

     韓流がらみでいえば、「青い演劇村」の活動拠点である宝城(ポソン)は人気ドラマ「夏の香り」の舞台となった地域で、美しいお茶畑を記憶している人も多いだろう。

     少々ネタバレになるが『阿娘別曲』の中に愛する人が権力者の慰み者になるのを見るに耐えられず、自分の目をくり抜くというくだりがある。その激しさにたじろぐ思いだが、ふと、その激情が敵へ向かうのではなく、自分自身に向けられるのはなぜだろうと思った。この中に韓国の精神風土の一要素があるような気がする、というのは穿ちすぎだろうか。

     さて「この世のすべてと引き換えても、ただあなたの愛だけがほしいのです」(劇中歌)と歌う熱く切ない愛の行方を、ぜひ劇場へ足を運んで、皆様の目で見届けていただきたい。

    藤村智子 Fujimura Tomoko

    藤村 智子 ふじむら ともこ 北海道文化財団コーディネーター。2006年3月まで札幌市芸術文化財団に勤務。主に札幌市教育文化会館の、映画、音楽、演劇、古典芸能などの自主文化事業を担当。2006年5月から北海道文化財団に勤務。北海道演劇財団評議委員、札幌劇場祭審査委員。「能を楽しむ会ー札幌」事務局長。

    コンカリーニョ・高橋正和のつれづれコラム


    「覚悟してる」

     覚悟してる? うそだぁ、絶対!! なわけないだろ・・・。

     「想定外でありましたので・・」とよく聞くいいわけです。想定外なことは想定していない事? 本当か? としょっちゅう思うのです。本当に想定していないのですかねぇ・・・。

     本当はそういうこともありえるかも、くらいなことはみんな思っているんじゃないですか? 高レベル放射性廃棄物を地中深く深く安定した地層に埋める。何億年前から安定しているから絶対大丈夫。その何億年前の前、そこは安定していたのか? って言うか、地球の成り立ちのCGとか見ていたら100%安定した地層というか地球はありえないと思うのですが・・・観測史上世界最大の地震はM9.5だそうです。これが日本を絶対に襲わないと誰が言えるのでしょうか。

     幌延とか泊とか・・少しずつ厳しくなる耐震構造の基準とか・・高層マンションとかトンネルとか・・考えだすと寝れないですね。何が言いたいかと申しますと、必要な事はそれでも必要なのですと本音で声を出してほしいのです。人間がその頭脳で想定できることなどたかが知れています。それでも今、必要なのです! と。考えてみれば飛行機! 飛行機はよく落ちています。絶対安全な飛行機は無いことはみんな知っています。それでも必要なのでしょう。落ちたらしょうがない・・・と思って乗るべきだと思うのです。自動車も同様だし、そんなふうに考え出したら全てが・・・生きていること全てに当てはまったりします。そう、個として生を受けた瞬間から常に死は避けられないものとして存在するのであれば、どうやって全うするかの選択をしなければならない・・これらの事柄はすべてそこに行き着くのでしょうか・・・。

     「覚悟」が必要なのです。あらゆることにおいてです。大きなことも小さなことも。仕事をしています。この仕事で最悪なことってどんなことかな? とよく考えたりします。自分はどこまでの最悪を引き受けることができるのかなぁ。これは結構きつい自問であります・・・。

    たかはし・まさかず

    1961年生まれ。インドにて瞑想中、「光ある仕事に就きなさい!」という観音菩薩からの啓示をうけ舞台照明家を志す。自然と人智の結晶、石造りの旧コンカリーニョの設立・運営に携わり大いなる大地・そのGreat Energyの恩恵の元、魂の平和を求め人生という名の「旅」を続け現在に至る。NPO法人コンカリーニョ理事・舞台照明家・愛称まこし。

    劇場通信|Vol.23

    2008 年 11 月 1 日発行

    発行:NPO法人コンカリーニョ デザイン:3KG 編集担当:小室明子

    Special Thanks:

    A Picture

    一枚の絵

    杉吉 篤 SUGIYOSHI ATSUSHI

    1960生まれ。全道美術協会会員。自由美術協会会員。この「仮面」は最近よく描いているという動物シリーズの作品のひとつ。「動物ですが、結局自分です。胴体は、ほとんど描いていません。最近、肉体よりも精神性に比重が移りかけています」。